上品な甘さとプチプチとした独特の食感が味わえる「イチジク」。
旧約聖書にも登場する歴史ある果物であり、アラビアを原産とし、その後ヨーロッパからペルシャ、中国へと伝わり、日本には江戸時代に伝わったとされています。
漢字で「無花果(花の無い果実)」と書きますが、食用部分は花軸が肥大化したものであり、食べた際に感じるプチプチとしたものは、花の部分です。
一見、花が咲かないように見えるので、「無花果」という漢字が使われています。
また、毎日ひとつずつ実が熟すことや、ひと月で実が熟すことから、「一熟」が語源になったともいわれています。
イチジクは、樹高を低くして実のなる枝を垂直に伸ばす「一文字整枝仕立て」という方法で栽培されています。側枝の下の方から果実がつき、下から順に成熟していくので、出始めの頃は実が大きい傾向にあります。
また、雨に弱くデリケートな果実なので、農家によっては、果実ひとつひとつに雨よけのカバーをし、雨がかからないように工夫をしています。
さらに、株元に藁をひく場合もあり、これは、①地面からの雨粒の跳ね返りを防ぐ、②雑草が生えてくるのを防ぐ、③保湿効果 を目的としています。
このように、イチジクは繊細な注意を払って育成されています。
落葉果樹なので、オフシーズンになると、葉が落ちて木のみになりますが、この期間にもたい肥を与え続け、次の栽培シーズンに備える必要があります。
【代表的な品種】
桝井ドーフィン ※写真は桝井ドーフィンです。
国内流通で圧倒的シェアを占めている、大粒のしずく型で濃い赤褐色の品種です。
ほどよい甘みとさっぱりとした風味が特徴で、比較的日持ちもいいです。
蓬莱柿(ほうらいし)
日本古来の品種で、桝井ドーフィンよりも色つきが浅いので「白イチジク」とも呼ばれています。
強い甘みとほどよい酸味を併せもった独特の味わいが特徴です。
また、果頂部が割れやすく輸送に向かないため、関東にはあまり出回ることがない品種です。
博多とよみつひめ
福岡県のオリジナル品種で、強い甘みと果汁たっぷりのジューシーな味わいが特徴です。
果肉は柔らかく、とろりとした滑らかな舌触りを楽しむことができます。
桝井ドーフィンに比べ、果皮の色は鮮やかで、果頂部にかけて丸みを帯びたポッテリとした形をしています。
【産地別カレンダー】
8月と9月で二度ピークを迎え、11月末まで緩やかに出荷が続きます。
※台風の影響等でピークが一度しかない年もあります。
①ふっくらとしていて、果肉が固すぎないもの
②大ぶりで左右対象なもの
③果皮に張りと弾力があり、果実全体が締まっているもの
④果頂の割れが大きすぎないもの
⑤ヘタまで赤褐色になっているもの
⑥ずっしりとして重量感のあるもの
イチジクは追熟しません。
傷みやすいため、なるべく早めにお召し上がりください。
日持ちしにくいため、早めに召し上がっていただくことをおすすめします。
保存される際は、乾燥に弱い果実ですので、ビニール袋に入れて冷蔵庫で保存してください。
皮は、軸の方からめくるように剥くと、きれいに剥くことができます。
1/4程度の大きさにカットした後、軸から皮を剥くと食べやすいです。
また、生食でおいしくお召し上がりいただけますが、加熱調理にも適しており、ジャムや、白ワインや砂糖と煮詰めてコンポートにすると冷凍保存も可能です。
※まれにイチジクの軸を切った際に、白い液体がでることがあります。肌につくとかぶれる場合がありますので、ご注意ください。
イチジクはその栄養価の高さから「不老不死の果物」と呼ばれています。
食物繊維が豊富であり、不溶性・水溶性どちらも含まれているため、胃腸の調子を整える整腸作用や血糖値の上昇を抑える効果が期待できます。
また、アントシアニンによる眼精疲労の回復、ビタミンB群やカリウム、カルシウムなどによる、アンチエイジングや美肌効果があるとされています。
他の果実と比較すると、低カロリー、低糖質でダイエット中にも嬉しい果物です。